【第42回】医療ローンとは|金利相場や審査基準、おすすめの借り方を解説

医療ローンを理解しないまま利用すると後悔することにもなりかねません。本記事では、医療ローンの基本的な内容やメリット・デメリットを解説します。医療ローン以外の資金調達方法も説明するので役立ててください。
1. 医療ローンとは

医療ローンとは、基本的に保険適用外(自由診療)となる医療行為を受けるために必要な費用を借りる際に利用できるものです。メディカルローンと呼ばれることもあり、身近なところでは、エステや脱毛の費用や、レーシック費用、さらには審美歯科などで行われる歯並びの矯正費用などに使われます。
申込み手続きは銀行などの金融機関だけでなく、クリニックや病院などでも可能です。
1-1. 金利は借入先・借入限度額に影響される
現在提供されている医療ローンの金利相場は年5%~10%と言われており、カードローンの半分程度に収まるレベルです。医療ローンは目的別ローンの一種であるため、カードローンに比べて金利が低めに設定されています。ただし最終的に適用される金利は借入先や借入金額、さらには審査結果によって決まります。
また利用の際にはカードローンと同様に審査を受ける必要がある点も覚えておきましょう。
その他、頭金を用意することで金利負担を下げることも可能です。できるだけ利息の支払いを抑えたいと考えるなら、余剰資金の中から、生活に負担にならない程度の頭金を用意することをおすすめします。
1-2. 審査基準は公開されていない
医療ローンも融資の一つであることから、利用の際には審査を受ける必要があります。ただし、他のローンについてもいえることですが、審査基準については公開されていません。もし審査に落ちたとしても、その理由を教えてもらえることはありません。
とはいえ、ほとんどの金融機関が審査の際に重視する項目が存在します。あらかじめその内容を確認しておくことで、自分が審査にとおるかどうか、ある程度予想できるでしょう。
審査の際にどの金融機関でも重視する項目としては、以下があります。
- 勤務先
- 勤続年数
- 年収
- 他社からの借り入れの有無
- 信用情報
したがって安定した収入が無かったり、勤続年数が短かったりなどすると審査に落ちる要因になるため注意が必要です。
1-3. 申込時に必要な書類が多いのが特徴
医療ローンを申込む際には、さまざまな書類の提出が求められます。具体的な書類としては以下のものが挙げられます。
- 本人確認書類:運転免許証、パスポートなど
- 収入証明書類:源泉徴収票、前年の確定申告書の写しなど
- 資金使途を確認するための証明書:治療を受けようとする病院が発行する証明書
そのほか、引き落とし口座に設定する金融機関の口座情報も用意しておきましょう。
利用する医療ローンによって必要となる書類は異なることから事前に確認し、漏れの無いように準備することをおすすめします。
2. 医療ローンを利用するメリット・デメリットを解説

ではここで、医療ローンを利用する際のメリット・デメリットについて、どのようなものがあるのかを確認しておきましょう。
2-1. 医療ローンのメリット
手元に資金がなくても医療ローンを利用することによって、必要な治療を受けられる点は大きなメリットの1つです。治療費用については分割で返済できるため、早く治療を受けたいと思っている人には非常に有意義なものといえます。
また、利息分についてはクリニック側で負担してもらえる可能性があることから、その場合は金利負担を気にせずに利用できるメリットがあります。また、治療の一環で保険適用外の処置が発生した場合は、その支払いに利用することも可能です。
2-2. 医療ローンのデメリット
デメリットとしては、融資を受けるまでに時間がかかることが挙げられます。医療ローンを利用する場合は、申込み、審査を受ける必要がありますが、審査期間が長く、融資決定まで時間がかかるケースが多く見られます。
また、医療ローンの中にはクリニックなどを通して申込めるものもあり、もしも転院する場合の手続きが面倒です。それまでにかかった医療費の全額一括支払いを求められる恐れがあります。手元に返済できるだけの資金があれば問題ありませんが、ない場合は慎重に検討しなければいけません。
3. 医療ローンは会社勤めでない学生・専業主婦(夫)でも申込める
医療ローンはその申込み条件を満たしていれば、学生や専業主婦(夫)でも申込めます。銀行などの金融機関が提供する医療ローンの場合、「満20歳以上で安定した収入がある人」となっているケースが多いです。一方で満18歳以上であれば申込める医療ローンも存在します。ただし、20歳未満の場合は保護者の同意が必要となるケースがほとんどです。
いずれも安定した収入がなければ審査に落ちてしまう可能性が高いですが、学生はアルバイトなどで定期的な収入があれば申込み条件を満たせるでしょう。専業主婦(夫)の場合は、配偶者貸付の制度を利用することで、配偶者に安定した収入があれば申込む方法があります。なお、配偶者の同意が必要となりますので、必ず同意を取って申込むようにしましょう。
4. 医療ローンの申込方法

医療ローンの申込み方法には、クリニックを通して申込む方法と、直接金融機関に申込む方法の2つがあります。以下にそれぞれの流れについて解説します。
クリニック経由で申込む方法
- クリニックの窓口にて医療ローンを申込みたい旨を伝える
- 申込書に必要事項を記入し、書類を提出する(Webでの申込みに対応している病院もある)
- 提出された申込書および書類に基づいて審査が行われる(審査の際、在籍確認が行われるケースがある)
- 審査結果がクリニックを通して通知される
- 医療ローン契約の締結を行う
- 病院が提携している金融機関より、クリニックに対して融資額が振り込まれる
- 契約の内容に従って、返済を行う
金融機関に申込む方法
- 医療ローンを利用したい旨を伝え、仮申込を行う(仮審査が行われる)(インターネットでの申込みも可能な場合がある)
- 仮審査に通過したら、申込書に必要事項を記載し、必要書類と合わせて提出する(本申込み)
- 本申込み後、本審査に移行する(在籍確認が行われる可能性がある)
- 本審査に通過したら、契約を締結する
- クリニックに対して、金融機関から融資額が振り込まれる
- 契約内容に従って、返済を行う
なお、本人の収入状況によっては保証人が必要となる場合があります。
5. 医療ローン以外にもお金を借りる方法はある
上で述べたとおり、医療ローンは目的別ローンの1つです。そして、医療ローン以外にもお金を借りる方法として、フリーローン、カードローン、保険の契約者貸付制度、福祉貸付があります。それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
5-1. フリーローンとは
フリーローンは、資金使途の制限がなく、自分の事情に合った使い道ができる点が特徴のローンです。資金使途の制限がないことから、医療費の支払いなどにも充てられます。
カードローンよりも若干低い金利で利用できる点はメリットといえますが、借入回数は1回のみとなっている点がデメリットです。一度借り入れた額を全て返済しない限り、次の借り入れの申込みができない点は利便性に欠けるといえるでしょう。
また審査時間もカードローンよりは長く、審査も厳しい傾向にあります。フリーローンの利用を考える際には将来的にどのくらいの額が必要かも含め、借入後の返済計画についてきちんと考えておくことが大切です。
5-2. カードローンとは
カードローンとは、銀行や消費者金融会社などが提供している個人向けの融資サービスのことです。原則として資金使途は自由ですが、事業資金に使うことは禁止されているのが一般的です。
金利はフリーローンよりも若干高めに設定されていますが、銀行系のカードローンの方が消費者金融系のカードローンと比べると比較的低めとなっている傾向があります。
カードローンはフリーローンと異なり、契約時に借入限度額が決められ、その範囲内であればいつでも借り入れおよび返済が可能です。また、カードローン会社によっては無利息期間サービスを受けられるため、そのようなサービスを利用しながら効率的に借り入れられる点がメリットといえます。
5-3. 保険の契約者貸付制度とは
保険の契約者貸付制度とは、解約返戻金がある生命保険を利用してお金を借りられる制度です。解約返戻金を担保することでお金を借りられるため、ローンのような審査がありません。そのためすぐにお金を借りられるのが特徴です。フリーローンやカードローンに比べると金利は低くなっています。
基本的に、返済期限は決められていません。もしも返済しない間に死亡もしくは満期を迎えた場合は、死亡保険金および満期保険金額から元本と利息が差し引かれて保険金受取人に支払われます。
ただし利息は発生するため、返済せずに放置して利息額が解約返戻金を超えてしまうと、その保険契約は失効してしまう点に注意が必要です。
5-4. 福祉貸付とは
福祉貸付とは、「生活福祉資金貸付制度」といわれるもので、厚生労働省および地域の社会福祉協議会が主体となって行っている貸付制度のことです。貸付を受けるには条件があり、低所得者や障害を持っている方、または高齢者に向けた貸付が主となっています。
貸付上限額は目的によって異なり、最大580万円(据置期間6ヶ月、返還期間20年)となっているほか、連帯保証人を立てる場合は無利子で、立てない場合でも年1.5%の低利子で貸付を受けることができる点がメリットといえます。
ただし住民税非課税程度の収入であることなど、申込条件が厳しく、誰でも借りられるわけではありません。しかし、条件に当てはまるのであれば、医療ローンの代替として候補に入れてもいいかもしれません。
6. おすすめの医療ローンを紹介

さまざまな金融機関で医療ローンが提供されています。ここでは、特におすすめの医療ローンをいくつか紹介するので参考にしてください。
6-1. 千葉銀行|ちばぎん医療ローン
申込める人の地域が限定されているものの、親族の医療費にもできる点が特徴となっています。金利も低めに設定されている点から、居住地や勤務先などが申込み条件に合う人にはおすすめです。
借入限度額 | 500万円 |
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金利 | 年5.0%~5.2%(変動金利) |
担保・保証人 | 不要 |
申込条件 | ・満20歳以上満65歳以下で完済時年齢が満70歳以下の人 ・継続かつ安定した収入がある人 ・居住地もしくは勤務先が、千葉県、東京都※、茨城県、埼玉県※、神奈川県※にある人 (※一部の地域を除く) ・ちばぎん保証(株)または(株)ジャックスの保証を受けられる人 |
申込方法 | ・インターネット ・郵送 ・店舗 |
返済期間 | 6か月以上10年以内(6か月単位) |
資金使途 | 本人または親族の医療にかかる以下の費用 ・治療費用(先進医療治療費用、不妊治療費用など) ・入院費用、検査費用、出産費用 |
6-2. 中国銀行|医療向けローン
医療ローンの中ではかなりの低金利を誇っており、介護施設入居費用などにも利用できる点が特徴となっています。できるだけ低い金利で借り入れを行いたいという人に向いています。
借入限度額 | 500万円 |
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金利 | 年2.975%(変動金利、2021年10月1日時点) |
担保・保証人 | 不要 |
申込条件 | ・申込時の年齢が満20歳以上65歳以下の人 ・継続かつ安定した収入がある人 ・保証会社(中銀保証株式会社、または株式会社ジャックス)の保証を受けられる人 |
申込み方法 | ・インターネット ・電話、FAX ・店舗 |
返済期間 | 6か月以上10年以内 |
資金使途 | 医療に関するものであること(以下の場合は利用不可) ・事業資金、投機性資金 ・使い道の分かる書類がない ・個人間取引 ・他行のからの借り換え |
6-3. 名古屋銀行|先進医療費ローン
先進医療を受ける際の治療費負担に特化しており、高額な借り入れができる点が特徴となっています。固定金利であることから、将来の金利変動を気にせず利用できる点もメリットといえます。
名古屋銀行の営業区域内に居住もしくは勤務しており、先進医療そして手術支援ロボット「ダヴィンチ」手術の利用を考えている方に向いています。
借入限度額 | 1,000万円 |
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金利 | 年2.9%(固定金利) |
担保・保証人 | 不要 |
申込条件 | ・「先進医療」または手術支援ロボット「ダヴィンチ」手術を受ける本人、または親族(配偶者並びに3親等内の血族および3親等内の姻族)であること ・申込時の年齢が満20歳以上、完済時年齢が満75歳以下である人 ・継続的かつ安定した収入がある人 ・SMBCファイナンスサービス株式会社の保証を受けられる人 ・原則として、居住地もしくは勤務先が名古屋銀行の営業区域内にあること |
申込方法 | 店舗(東京支店を除く) |
返済期間 | 6ヶ月以上~10年以内 |
資金使途 | 「先進医療」に関する治療費用および、手術支援ロボット「ダヴィンチ」手術の費用に限る |
6-4. トマト銀行|先進医療ローン
がんの治療である陽子線治療、重粒子線治療などといった先進医療に特化した医療ローンで、低金利で利用できる点が特徴となっています。陽子線治療、重粒子線治療などの先進医療費用を考えている方に向いています。
借入限度額 | 300万円 |
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金利 | 年2.9%(変動金利) |
担保・保証人 | 不要 |
申込条件 | ・申込時の年齢が満20歳以上65歳以下で、かつ完済時年齢が満70歳以下の人 ・安定した収入があり、前年度の年収(税込)が200万円以上の人 ・居住地もしくは勤務先がトマト銀行の営業区域内にある人 ・SMBCファイナンスサービス株式会社の保証を受けられる人 |
申込方法 | 店舗 |
返済期間 | 6ヵ月以上10年以内 |
資金使途 | 本人または家族の悪性腫瘍に対する陽子線治療、重粒子線治療等、先進医療に係る治療費用に限る (家族とは、配偶者ならびに3親等内の血族および3親等内の姻族の人を指します) |
6-5. 愛媛銀行|メディカルローン
保険適用はもちろん、保険適用外の治療全般に使えるローンです。金利は若干高めに設定されていることから、借入希望額が比較的少なく、早期に返済できる方に向いています。
借入限度額 | 300万円 |
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金利 | 年8.8%(固定金利) |
担保・保証人 | 不要 |
申込条件 | ・申込み時の年齢が満20歳以上で、完済時年齢が75歳以下の人 ・継続かつ安定した収入がある人 |
申込方法 | ・インターネット ・FAX ・店舗 |
返済期間 | 6ヵ月以上10年以内 |
資金使途 | 本人または家族が受診・治療した医療・美容関連費用全般(例:レーシック、美容整形、インプラント、人間ドック、入院費用など) ただし、事業資金は除く |
7. 医療ローンの利用に向いている人・向いていない人の特徴とは

ここまで述べてきたとおり、医療ローンにはメリット・デメリットがあります。したがって、利用の際には自分が本当に医療ローンに向いているのかどうかを見極める必要があります。
7-1. 医療ローンが適している人
医療ローンは審査に時間がかかることから、融資が実行されるまでの医療費を自分で支払う必要に迫られる可能性があります。したがって、融資実行まで治療を待てる人、もしくは融資を受けるまでの治療費を払える程度に手持ち資金に若干の余裕がある人は医療ローンの利用に適しているといえるでしょう。
また、適用される金利が低く、利用しようとしているクリニックが費用の一部を負担してくれるなど、利用しやすい環境が整っている場合も医療ローンに適しているといえます。
7-2. 医療ローン以外の方法が適している人
反面、融資実行まで時間がない(治療を急ぐ)人や、審査に通過できるか不安な人には医療ローンは向いていません。商品によっては資金使途がかなり限定される可能性が高いです。
したがって、医療費以外の支払いにも充てたいと思うのであれば、フリーローンもしくは保険の契約者貸付などを利用する方がおすすめといえるでしょう。また、借りたお金を比較的短期間で返済できる見込みがある場合は、融資までの時間が短く、審査基準も比較的優しいカードローンがおすすめです。
まとめ スピーディな借り入れを希望するならフリーローン・カードローンがおすすめ

医療ローンは、医療行為を受ける際に利用できるローンです。融資が実行されるまでに時間がかかったり、クリニック経由での借り入れは転院の際に全額返済を求められたりするなどのデメリットがあるものの、カードローンやフリーローンに比べると低金利で利用できます。
したがって、医療ローンは治療費を支払うまでの期間に比較的余裕があり、転院の可能性が低い場合に利用するのがおすすめです。
一方で、スピーディにお金を準備する必要があったり、金利が少々高くても利便性を重視したいと考えていたりする場合はカードローンやフリーローンを検討するといいでしょう。
いずれにしても、ローンを契約するときは複数のローンを比較して自分に最適な物を選択することが大切です。いくつかのローンをまとめて比較できるサイトを賢く活用しながら、治療費の準備を進めましょう。
- 金利ランキング
ライター紹介
- 氏名:
- 新井智美
- 保有資格:
- ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
- 主なキャリア:
- コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,500本以上。
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