【第120回】不動産担保ローンは建物のみでも借りられる?担保設定の可否と審査ポイントを解説
また、借地権付き建物であっても、一定の条件を満たせば融資を受けられるケースがあります。ただし、土地が含まれない分、担保評価は不安定になりやすく、審査のハードルは高くなる点には注意が必要です。
この記事では、建物のみで不動産担保ローンを利用する際の仕組みや注意点、さらに審査に通るための具体的な対策まで分かりやすく解説します。
所有している不動産が借地や共有名義などで土地を担保にできない方は、ぜひ参考にしてください。
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1. 不動産担保ローンは建物のみでも借りられる?
ここでは、建物のみで不動産担保ローンを利用する際の基本的な考え方や、押さえておきたいポイントについて整理します。
1-1 建物のみでも担保設定は可能
不動産担保ローンは、土地がなくても建物単体で担保設定できることもありますが、あくまで例外的な取り扱いで、全てのケースで認められるわけではありません。
例えば、築年数が比較的新しく、建物の状態が良好である場合や、都市部など需要が高く将来的に売却しやすいと判断される立地にある場合だと、担保として一定の評価が認められる可能性があります。
ただし、金融機関は担保価値だけでなく、申込者の年収や勤務状況、既存の借入状況などを総合的に確認しながら審査を行うため、建物のみでの借り入れが可能かどうかは申込者の条件によって大きく左右される点も理解しておきましょう。
1-2 対応している金融機関は限られる
建物のみの担保に対応している金融機関は少なく、特に銀行では土地と建物を一体として担保にすることを基本としているため、建物単体での融資は敬遠されやすい傾向があります。
そのため、申込先は不動産担保ローンを専門に扱う会社やノンバンクの金融機関が中心となりますが、これらの金融機関は柔軟な審査を行う一方で、金利や手数料が銀行よりも高めに設定される傾向がある点には注意しておきましょう。
また、金融機関ごとに審査基準や対応方針には大きな違いがあるため、1社だけで判断するのではなく、複数の金融機関を比較して検討することも忘れないようにしてください。
1-3 土地ありと比べて審査は厳しくなる
金融機関は審査を行う際に、「融資金額を回収できるか」という点を最も重視し、その判断材料として担保の安定性を厳しくチェックします。
土地が含まれる不動産は資産価値が比較的安定しているため、万が一返済が滞った場合でも売却による回収が見込まれやすいと判断されます。一方、建物のみの場合は価値の下落リスクが高いと判断されやすく、審査は厳しくなる傾向があります。
その結果、融資額が抑えられたり、審査そのものが厳しくなったりしてしまうのです。
建物のみで借り入れを検討する場合は、担保評価だけでなく返済能力がより重視される点を理解しておくことが大切です。
2. 建物のみの担保が不利とされる理由
建物のみの担保が不利とされる理由は、金融機関の審査基準や不動産の性質にあります。
2-1 建物は時間とともに価値が下がる(減価資産)
建物が担保として不利とされる最大の理由は、建物が時間の経過とともに価値が下がる「減価資産」であるためです。
不動産の価値は一般的に「土地」と「建物」で構成されます。土地は長期的に価値が下がりにくい一方で、建物は築年数の経過とともに評価額が低下していくため、担保としての安定性に欠けると判断されやすくなるのです。
特に木造住宅は法定耐用年数が短いため、一定の年数を超えると担保価値がほとんど認められないケースもあり、融資の可否に大きく影響します。
2-2 担保としての流動性が低い
金融機関は審査において、担保不動産を売却して資金を回収できるかを重視します。そのため、売却のしやすさ、いわゆる「流動性」も重要な判断基準となります。
土地と建物が一体となった不動産は需要が高く、比較的買い手が見つかりやすいのに対し、建物だけを単独で売却するケースは限定的で、購入できる人も限定されやすいのが実情です。
さらに借地の場合は、売却や名義変更の際に地主の承諾が必要になることが多く、こうした点も審査上のマイナス要因とされる傾向があります。
2-3 建物のみは担保評価が低くなりやすい
不動産担保ローンでは、土地と建物を一体として評価するのが一般的です。そのため、建物のみの場合は担保評価が低くなりやすく、条件によっては評価対象外となるケースもあります。
その結果、借入可能額が想定よりも低くなったり、そもそも融資の対象とならなかったりする場合があります。
建物のみでの借り入れを検討する際は、こうしたリスクを踏まえたうえで慎重に判断することが重要です。
3. 建物のみで借りられるケースと借りにくいケース
ここでは、審査に通る可能性が高いケースと、難しくなるケースの違いを整理し、あわせて見落としがちな注意点も解説します。
3-1 借りられる可能性が高いケース
建物のみであっても、担保価値と返済能力の両方がバランスよく評価される条件がそろっていれば、審査に通る可能性は十分にあります。 例えば、都市部や人気エリアなど需要が高い立地にある物件は、万が一売却が必要になった場合でも買い手が見つかりやすいため、金融機関にとっての回収リスクが相対的に低いと判断されやすくなります。
さらに、申込者の年収が安定していて、勤務先や勤続年数にも問題がなく、他の借り入れが少ない場合には返済能力の面でも高く評価されるため、審査全体としてプラスに働きやすくなります。
このように、建物のみのケースでは担保評価が弱くなりやすい分、「安定した返済力をどれだけ示せるか」が審査通過の大きなポイントだと考えましょう。
3-2 審査が厳しくなるケース
一方で、建物の状態や立地条件、さらに申込者の属性によっては、審査が厳しくなるケースも少なくありません。
例えば、築年数が古い木造住宅は、すでに担保価値が大きく下がっていると判断されることが多く、金融機関によっては評価対象外とされることもあります。
また、地方や需要の低いエリアにある物件は、金融機関から「売却に時間がかかる」、あるいは「買い手が見つかりにくい」と判断されるため、担保としての評価が伸びにくくなるケースも考えられます。
さらに、収入が不安定であったり、他社からの借り入れが多かったりする場合には、返済能力に不安があると見なされ、担保と信用の両面でマイナス評価となることで、審査通過が難しくなる可能性が高まる点にも注意が必要です。
4. 借地・共有名義の不動産で借りる際の注意点
ここでは、借地・共有名義で不動産担保ローンを利用する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
4-1 借地は「売却しにくい構造」が審査のハードルになる
借地の場合、建物は自分の所有であっても土地は地主の所有となるため、担保としての自由度が制限される点が特徴です。
金融機関が重視するのは「万が一の際に売却して回収できるか」という点です。しかし、借地は自由に売却できないケースが多く、地主の承諾が必要になることもあるため、それが審査において大きなハードルになります。
このような制約により、担保としての扱いが難しくなった結果、融資条件が厳しくなる傾向があるのです。
4-2 地主の承諾や共有者の同意など「権利関係」が審査に影響する
借地や共有名義の不動産では、第三者の同意が必要になるため、権利関係の複雑さが審査に大きく影響します。
借地の場合は、担保設定や売却時に地主の承諾が求められることが多く、場合によっては承諾料(名義書換料)が発生することもあります。
また、共有名義の場合には他の共有者全員の同意が必要になるケースがあり、意見がまとまらない場合には手続きが進まないことも考えられます。
このような要素は、単に担保価値の問題にとどまらず、「実際に処分できるかどうか」という観点にも影響するため、結果として審査が厳しくなってしまうのです。
4-3 借地・共有名義でも条件次第で融資は可能
ただし、借地や共有名義であっても、必ずしも融資が受けられないわけではなく、条件が整っていれば融資が受けられる可能性は十分にあります。
例えば、立地が良く需要が見込める物件であり、建物の状態も良好であることに加え、地主の承諾や共有者の同意がスムーズに得られるなど、権利関係に問題がない場合には、金融機関から前向きに評価される可能性も考えられます。
重要なのは、「問題なく売却もしくは処分できる状態であるかどうか」です。この点をクリアできるかが融資可否の大きな判断基準になると考えておきましょう。
5. 建物のみの不動産担保ローンの借入可能額の目安
建物のみで不動産担保ローンを利用する場合、「どの程度の金額を借りられるのか」は多くの方が気になるところですが、実際の借入可能額は担保評価だけでなく返済能力や信用情報も含めて総合的に判断されます。
ここでは、一般的な借入可能額の目安とその考え方について分かりやすく解説します。
5-1 建物評価額の60%〜70%が目安
建物のみを担保とする場合の借入可能額は、一般的に「建物評価額の60%~70%程度」が目安とされていますが、必ずしもその金額までを借りられるわけではありません。
なぜなら、不動産担保ローンでは、担保評価額に対して一定の割合(担保掛目)を掛けて融資額を算出し、建物のみの場合は価値の下落リスクが大きいため、この掛目が低めに設定される傾向があるからです。
そのため、同じ評価額であっても、土地付きの不動産と比べると借入可能額は抑えられる点に注意しておきましょう。
5-2 築年数・構造で評価は大きく変わる
建物の評価額は、築年数や構造、維持管理の状況などによって大きく変わり、これらの要素が借入可能額にも直接的な影響をおよぼします。
一般的に建物の評価は築年数が浅いほど高く、年数の経過とともに徐々に低下していきますが、木造住宅は法定耐用年数が短いため特に評価が下がりやすい傾向があります。
一方で、鉄骨造やRC造などの耐久性が高い建物は、比較的長期間にわたって評価が維持されやすく、担保としても有利に働くケースが多くみられます。
5-3 最終的には申込者の返済能力で決まる
最終的な借入可能額は、担保評価だけではなく、申込者の返済能力によって大きく左右されます。
なぜなら、金融機関は審査において年収や勤務状況、既存の借入状況などをもとに返済負担率を算出し、無理なく返済を継続できるかどうかを慎重に判断するからです。
特に建物のみの場合は土地付きと比べると担保力が弱くなりやすいため、その分返済能力を判断する割合が高くなり、「どれだけ安定して返済できるか」が融資判断の決め手になります。
6. 建物のみで不動産担保ローンを利用する際の注意点
情報が不十分なまま不動産担保ローンに申込むと、「思ったよりも借りられない」もしくは「返済負担が重い」といったミスマッチにつながる可能性があります。
ここでは、建物のみで不動産担保ローンを利用する際に押さえておきたい代表的な注意点について解説します。
6-1 希望額どおり借りられない可能性がある
建物は時間の経過とともに価値が下がる資産のため、担保評価が低くなりやすく、結果として予想していたよりも借入可能額が少なくなる可能性があります。
特に、築年数が古い場合や木造住宅の場合は評価が大きく下がることもあり、「評価額が思ったより低かった」というケースも考えられます。
さらに、金融機関は担保価値だけでなく返済能力も含めて総合的に判断するため、収入や他の借入状況によっては、担保評価から算出された金額よりもさらに減額される可能性も否定できません。
そのため、資金計画を立てる際には「借入希望金額が満額借りられる前提」で考えるのではなく、余裕を持った金額で計算しましょう。
6-2 金利が高くなりやすい
建物のみの担保は、金融機関にとって「価値が下がりやすい」「売却しにくい」といったリスクがあるため、その分を金利でカバーするかたちになります。そのため、住宅ローンと比べると金利は高めに設定されるのが一般的です。
また、同じ不動産担保ローンであっても、土地付きの不動産と比べると担保の安定性が低くなるため、金利が上乗せされる傾向があります。
特に、不動産担保ローンを専門とするノンバンクでは、柔軟な審査で利用しやすい反面、金利や手数料が高くなるケースも多く、最終的な返済総額が大きくなる可能性があります。
さらに、金利だけでなく、以下のコストが発生する場合もあります。
- 事務手数料
- 保証料
- 繰上返済手数料
単純な金利だけでなく、トータルコストで比較し、判断することが大切です。
6-3 返済不能時は競売リスクがある
不動産担保ローンは、返済が滞った際に担保として提供している不動産を売却して回収する仕組みで、建物のみの場合でもこの特徴は変わりません。
返済が滞ると、最終的には競売手続きに進むことになり、一般的な市場売却よりも低い価格で処分されるケースが多いため、手元に資産が残りにくくなるリスクがあります。
また、借地の場合は地主との関係や契約内容によってさらに手続きが複雑になることも考えられるため、想定外の損失が生じる可能性も否定できません。
このようなリスクを回避するためにも、借入時には無理のない返済計画を立てることはもちろん、万が一に備えて返済余力や代替手段も視野に入れておくことを忘れないようにしましょう。
7. 建物のみでも不動産担保ローンの審査に通るための対策
ここでは、建物のみでも不動産担保ローンの審査に通る可能性を高めるための、具体的な対策について解説します。
7-1 複数の金融機関に相談する
審査基準や担保評価の考え方、対応可能な物件の範囲は金融機関によって異なるため、1社だけで判断してしまうと、本来利用できたかもしれない不動産担保ローンを見逃してしまうかもしれません。
特に、建物のみの担保に対応している金融機関は限られているため、複数の金融機関に相談し、以下の点などを比較することで、自分に合った最適な条件を見つけやすくなります。
- 対応可否
- 金利条件
- 融資可能額
また、相談することで審査通過の可能性を高めるだけでなく、条件面での差も大きくなる可能性があることからも、複数の金融機関に相談する手間をかける価値は十分にあるといえるでしょう。
7-2 審査前に収入・信用情報を整えておく
建物のみの場合は担保評価が弱くなりやすいため、その分、申込者の信用力や返済能力がより重視される傾向があります。
そのため、事前に以下の点を見直しましょう。
- クレジットカードやローンの延滞を解消する
- 不要な借り入れを整理して借入件数を減らす
- 返済負担率を下げる
これらを見直すことで、金融機関からの評価が改善され、審査に通る可能性が高まります。
特に信用情報は短期間では改善しにくいため、申込みのタイミングを見極めることも重要な対策の1つです。
7-3 リフォームで建物の評価を高める
建物の状態は担保評価に直接影響するため、老朽化している部分を改善することで、評価額の見直しにつながる可能性があります。
例えば、
- 外壁や屋根の修繕
- 水回り設備の更新
- 室内の劣化部分の補修
といったリフォームを行うことで、物件の印象や実用性が向上し、担保としての評価がプラスに働くことも考えられます。
ただし、リフォーム費用に対して評価がどれだけ上がるかは状況によって異なるため、事前に金融機関へ相談しながら進めましょう。そうすることで、より効果的な対策が実現できます。
8. 建物のみで不動産担保ローンを借りられない場合の代替手段
建物のみで不動産担保ローンを借りられない場合には、次の代替手段を検討しましょう。
8-1 無担保ローンを検討する
無担保ローンは、担保を必要とせず、申込者の信用力や収入状況をもとに審査が行われるため、不動産の条件に左右されない点が特徴です。
そのため、建物のみで担保評価が難しい場合でも、収入が安定していれば利用できる可能性はあります。
ただし、不動産担保ローンと比べて金利が高めで、借入可能額も小さくなる傾向があるため、返済負担を踏まえたうえで利用を検討しましょう。
8-2 リースバック・売却も選択肢になる
資金調達の方法として、不動産の売却やリースバックを検討するのも一つの手段です。
リースバックは、自宅を売却した後も賃貸として住み続けられる仕組みで、まとまった資金を確保しながら住環境を維持できる点が大きな特徴です。
一方で、通常の売却は資金化しやすい反面、住み替えが必要になる場合がある点にも注意しておきましょう。
いずれの手段も不動産の価値を活用して資金を得る方法ですが、生活への影響やコストも含めて判断することが大切です。
8-3 共同担保を検討する
建物のみでは担保が不足する場合、他の不動産を追加して「共同担保」とすることで、融資を受けられる可能性があります。
例えば、家族名義の不動産や、別に所有している土地や建物を担保に加えることで、担保全体の評価を高められます。
ただし、共同担保にした不動産にも返済が困難になったときの影響がおよぶため、関係者の同意と十分な理解が不可欠です。事前に条件を整理し、関係者や金融機関と相談しながら慎重に検討しましょう。
9. 建物のみの不動産担保ローンは「事前準備」で結果が変わる
建物のみでの不動産担保ローンは、土地付きのケースと比べて審査の難易度が高くなる傾向がありますが、事前準備や情報収集の進め方によって、結果は大きく変わります。
特に重要なのは、「借りられるかどうか」を一つの基準だけで判断するのではなく、早い段階から複数の金融機関や代替手段を比較し、自分にとって最適な選択肢を見極めることです。
また、担保評価だけに頼るのではなく、返済能力の実績や信用情報の整備など、自分でコントロールできる要素をしっかり整えておくことも、審査通過の可能性を高めるうえで重要なポイントになります。
資金調達は一度の判断で大きな影響を与える重要な意思決定のため、条件を十分に見極めたうえで、無理のない返済計画とともに、自分に合った方法を選択しましょう。
ライター紹介
- 氏名
- 新井 智美(あらい ともみ)
- 保有資格
- ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
- 主なキャリア
- コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,500本以上。
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